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12月号 「冬の手足の冷えのお話」
寒くなると手足が冷えるという事は、誰しも経験があると思います。気温低下により
血管が収縮して血流が低下するために起こり、ある程度であれば健康な人にも起こります。
しかし、なかには動脈硬化などによる血行障害が隠れている場合があります。最近はTVの健康番組でよく心筋梗塞や脳梗塞の話題が取り上げられ、動脈硬化の怖さは多くの方がご存知でしょう。けれど動脈硬化は、決して心臓や脳の血管だけに起こる変化ではなく、全身の血管に起こる(それも同時に)可能性があるというイメージは少ないように思います。
手足の血管に動脈硬化が起こり、血行障害が起こることを末梢動脈閉塞症(PAD)といいます。症状として、軽症の時期は手足が冷たくなる・痺れがある・皮膚が青白くなるなどがあります。症状がすすむと、一定の距離を歩くと足の痛みや疲れが出現し、少し休む(数分程度)ことを繰り返さないと歩けなくなります。さらに重症になると手足の皮膚が黒くなり、潰瘍ができることもあります。
PADが起こる危険性が高い人には「喫煙習慣」「生活習慣病(糖尿病・脂質異常症・高血圧)の方」があげられ、特に生活習慣病の方で心筋梗塞・脳梗塞の既往のある人は要注意です。PADの治療には、薬物療法・血管内治療・手術療法などがありますが、早期発見・早期治療と、原因となる病気(生活習慣病など)の治療が不可欠です。
手足の冷感やしびれの原因としては、他にも血管の炎症性疾患や膠原病、脊椎病変等から起こることもあります。寒くなったから冷えは当たり前だと思わずに、気になるようであれば、お近くのお医者さんにご相談ください。
一般社団法人右京医師会 斎藤 隆道
11月号 「もの忘れは歳のせい?それとも認知症の前兆?
:軽度認知障害(認知症予備群)について」
年齢を重ねるにつれて「最近もの忘れが多くなった」と感じても、たいていは「歳のせいだろう」と考えておられる方が多いと思います。ところで先頃「65歳以上の高齢者の4人に1人が認知症かその予備群」との厚生労働省研究班の調査結果が新聞に掲載されました。新聞の見出し記事にも用いられた「予備群」とは何を意味するのでしょうか?認知症予備群とは正常と認知症の中間すなわちグレーゾーンに位置するもので医学的には「軽度認知障害」と呼ばれ、次のような症候にあてはまる方が該当します。
・本人にもの忘れの自覚がある、家族からもの忘れを指摘される。
・年齢や教育歴などを考慮しても記憶などの認知機能が客観的に低下している。
・日常生活は概ね問題なく行うことができる(自立している)。
・認知症ではない。
平たく言うと、「もの忘れが自分でも気になり、家族から指摘されることがあるけれども買い物などの日常生活は一人で可能で、まだ認知症ではない。ところが、記憶の検査を行ってみたら同年代の記憶力と比較して低下がみられた(年齢相応ではなかった)」というのが典型例です。認知症予備群(軽度認知障害)の方は全国に400万人で、認知症の方462万人とほぼ同数いることが最近の調査で明らかになりました。軽度認知障害の方は認知症になる危険性が高く、約半数の方が5年以内に認知症へ移行するとの研究結果があります(一方で認知症にならない方も半数近くいます)。認知症の中で最も多く約7割を占めるのがアルツハイマー型認知症で、これは脳にアミロイドベータと呼ばれる蛋白質が異常にたまることが原因と考えられています。軽度認知障害からアルツハイマー型認知症に移行した人の大半は、軽度認知障害の段階ですでに脳にアミロイドベータ蛋白がかなりたまっていたことがPETという検査を用いた研究でわかってきました。このように認知症になる前には長い「水面下」の期間があり、通常はアミロイドベータ蛋白がたまり始めてから認知症になるまでに10年以上の時間的なずれがあると考えられています。したがって、もの忘れがまだ軽い段階から早く気づくことによって進行を抑える取り組みが重要です。日常生活においては散歩などの運動習慣、積極的に社会活動に参加すること、読書や計算などの知的活動を毎日行うことを心がけることが良いといわれています。さらにアミロイドベータ蛋白が脳にたまるのをできるだけ抑えて病態が進行しないようにする治療薬が現在開発中ですが、最近ではできるだけ早い時期から使い始める方が良いと考えられるようになってきました。
いったん認知症が進行してから治療を開始しても、病態そのものを元に戻すことは難しいのが現状です。軽いもの忘れの場合にはそれが加齢に伴うもの忘れなのか、軽度認知障害によるものかの判断は難しい場合が多いため、気になる場合には迷わずに一度医療機関へ相談していただくことを早期発見・早期予防のためにお勧めいたします。
一般社団法人右京医師会 須藤 慎治
10月号 「早くもインフルエンザ予防接種の時期がまいりました!!ちょっと、Q&A。」
(高齢者の法定予防接種は10月15日からです。)
①昨年接種したから今年はしなくてもいい?
インフルエンザは、毎年、流行するタイプが違うため、毎年ワクチンをうつ必要があります。
また、このワクチンは、生ワクチンではなく不活化ワクチンといった種類なので、ワクチンとしての効果が長く持続しません。せいぜい半年までです。従って毎年接種しないと効果がないのです。
②インフルエンザの特効薬があるし!
日本では抗インフルエンザ薬が普及し、感染した際はすぐに使用すればインフルエンザを治すことは可能です。がしかし、薬を使って解熱しても完治するまでに家族や職場の方へ感染さす可能性はありますし、何よりも発症後に抗ウイルス薬を使っても重篤な合併症を発症する危険性は皆無にはなりません。やはり、かからない、その為のインフルエンザワクチンはどうしても必要です。ただ実際には、インフルエンザワクチンをうっても、100%は予防できません。しかし、流行株とワクチン株が一致した場合、50~75%の予防効果は認められます。
③接種した方が絶対いい方とは?
インフルエンザにかかると重症化しやすい方(①65歳以上の方②60-64歳で心臓、腎臓もしくは呼吸器機能に障害があり身の回りの生活が制限される方③60~64歳でHIVに感染しており日常生活がほとんど不可能な方)、そのような方を介護する方や医療従事者、妊婦さんや妊娠が予想される方などは接種されるのが良いと思われます。
④接種した後が怖い?
インフルエンザワクチンの副反応で重篤なものは1%未満にすぎません。主には、発赤・腫脹・疼痛などの局所症状が10~20%、発熱・頭痛・悪寒・倦怠感などの全身症状が5~10%に見られますが通常2、3日で消失します。ショックやアナフィラキシー様症状が稀に見られますので、接種後30分は接種した医療機関で安静にされた方がよいです。
⑤他の病気にかかって熱がでたあとって、すぐにワクチンうってもいいの?
免疫抑制剤や抗癌剤を使用されておられる方は、主治医の先生と相談した上でうけてください。また、たまたま感染症にかかってしまったら感染症の種類によってインフルエンザワクチンをうつタイミングを考える必要があります。麻疹の場合は治ってから4週間程、風疹・水痘・おたふくかぜの場合は2~4週間、突発性発疹・手足口病、伝染性紅斑等では1~2週間、軽症の感染症なら体調が回復していればワクチン接種は可能です。
⑥最後に。
接種できないような乳児、アレルギーや基礎疾患があるため接種できない方々を守るため、もとより自分を守るため、インフルエンザワクチンの接種をおすすめします。
一般社団法人右京医師会 寺村 和久
9月号 「ステロイドを塗ると黒くなりませんか?」
湿疹や虫刺されに対して、ステロイドの外用薬を処方することがあるのですが、その際に、患者さんから、”ステロイドを塗ると黒くなりませんか?”とか、”ステロイドを塗った後に、日光は浴びないほうがいいのですか?”という質問をよくされます。大学の講義や新米の頃に医局の先輩からも、ステロイドの副作用として、そのような話は聞いたことがなかったので、最初は、なぜそのような質問をされるのかわからなかったのですが、その後、病棟で勤務していた頃にも看護師さんから、”患者さんの顔にステロイドを塗ってあげたんですが、そのあとに外出してもらうのは避けてもらったほうがいいですか?”と聞かれて、どうも、ステロイドを外用して日光を浴びると黒くなるという認識を持っているかたが多くいらっしゃることに気づきました。夏に海水浴などで日焼けした後に、ひりひりすると訴えられる患者さんにも、やけどに準じて、ステロイドを外用をすることがありますが、自身でも使用した経験からも、ステロイドを外用した部分で、特に黒さが強くなっていた印象はありませんでした。後にわかったのですが、湿疹などの炎症を起こしている部分が炎症後の色素沈着でしみのようになることがあるのですが、どうもそれが、ステロイド外用による副作用と思われているようでした。
炎症は、たとえるなら火事が起こっている状態で、火事の後は、焼け野原になって黒くなる(色素沈着)のですが、その色素沈着を起こしにくくするためには、火事である炎症をいかに早くおさえるかによりますので、そのためには炎症を抑えてくれるステロイドで火消しをすることは重要なのです。
一般社団法人右京医師会 今井 慎
8月号 「虫刺され、予防は必要?」
ダニに咬まれて重い病気になった…というニュースを聞かれた方があるでしょうか。それは、虫に媒介される数種類のウイルス感染症について紹介されたものです。確かに、虫刺されそのものは珍しくもないのですが、毒を刺入する虫もいれば、虫の体液や病原体を刺し口から吐き出す虫もいるのです。虫に毒や病原体を注入されているとしたら、虫刺されは予防すべきだと思いませんか?
虫刺されの部位に腫れてきても、件のウイルス感染症ではなく、虫や虫の毒に対するアレルギー反応であったり、掻き傷から細菌感染を起こした状態であることが多いのも確かですが、腫れが引かない、刺された部位以外に皮膚症状が拡大する、発熱や肝機能障害(顔色が悪い・だるい)などを併発してきた場合には、報道されたような疾患でなくとも診察を受けて下さい。
昔は虫刺されの予防なんてしなかった…、と仰る方も多いでしょう。しかし、シカなどの獣害が各地で問題になっているとおり、これまでにない環境変化が起こり、それに伴って都市近郊でもヒトと野生動物との頻繁で密接な接触の期会が増え、野生動物が運んでくるダニや動物のもつ病原体そのものが人里に持ち込まれることが多くなったといわれています。ダニでも蚊でも、刺す・咬む虫の中には毒をもっているものや病原体を伝播する生物がいるということを考え、野山海川・公園などへ行く時にはもちろんのこと、ガーデニングや家事の間にも、肌を露出させない服装の工夫をしてください。暑いのに…と仰る方も多いかもしれませんが、露出を避けた服装の工夫は、ケガ予防や紫外線遮蔽にもつながります。最近では、冷感繊維や熱中症対策も兼ねた反射素材などいくつかの機能を併せもった優れた素材が多く出回り、フェイスマスクやアームガードなど部分でカバーするも含め、案外、心地よいものが見つかります。
余談ですが、ダニは数日間も皮膚に咬みついたままになることがあり、黒ゴマのようなものがぶら下がっていてよくみると足が生えていて動いている…!!などということが起こります。このような場合、引きちぎるとダニの口が皮膚に残りシコリになってしまうので、医療機関に行って口器ごと切除してもらうことをおすすめします。
一般社団法人右京医師会 内田 敦子
7月号 「脂肪肝はあなどれません」
みなさんは健康診断などで「脂肪肝ですね」といわれたことはありませんか?
脂肪肝は文字どおり肝臓に脂肪がたまった状態のことですが、従来は治療の必要性の低いものとされてきました。そのため、「脂肪肝=小太り」くらいのニュアンスで、言われて愉快ではないけれども、深刻には受け止めなかった方が多いのではないでしょうか。
これまでもアルコールをたくさん飲む人には脂肪肝が高い率でみられるため、肝硬変の前段階として用心されてきました。しかし最近の研究で、アルコールを全く飲まない人の脂肪肝であっても、肝硬変に進行し、さらには肝臓がんの要因になることがあることが分かってきました。
この放っておけない、アルコールを飲まない人の脂肪肝のことは「非アルコール性脂肪肝炎(NASH, ナッシュ)」と呼ばれるようになりました。「脂肪肝」ではなく「脂肪肝炎」ですので、B型肝炎・C型肝炎・アルコール性肝炎といった他の肝臓の病気と同じように肝硬変・肝臓がんに進まないようにすることが大事であるというわけです。
ただ、「脂肪肝」なのか「脂肪肝炎」なのかはまだ簡単に見分けることができません。ですので、脂肪肝と言われた方、特に長年言われてきた方は一度医師に相談してみることをお勧めします。
一般社団法人右京医師会 古谷 昌則
6月号 「ひざに痛みはありませんか?」
立ち上がり、歩き始め、階段の上り下りに、ひざの痛みや違和感を感じることはありませんか?こんな症状がでたら、「変形性ひざ関節症」かもしれません。
中高年のひざの痛みの多くは、ひざ関節の軟骨がすり減ることで痛みや腫れが生じる「変形性ひざ関節症」という病気が原因です。ゆっくり進行する病気で、最初は、歩き始めや階段の上り下りの時に、ひざの痛みや違和感を一時的に感じる程度です。進行すると、痛みが持続したり水がたまって腫れる、ひざの曲がりが悪くなるなどの症状が見られるようなります。さらに進行すれば、痛みが強くなり、歩行困難など日常生活に支障をきたすこともあります。
関節軟骨は関節の骨の表面を覆う組織で、関節の動きをスムーズにして、関節にかかる衝撃をクッションのように吸収する役割があります。しかし、加齢とともに、太ももの筋力が低下して軟骨が質的に変化すると、軟骨がすり減り始めます。関節のすき間が狭くなって炎症を生じると、ひざに痛みを感じるようになります。これが変形性ひざ関節症です。
治療としては、保存療法と手術があります。保存療法では、痛みの強さにあわせて、痛み止めの飲み薬やはり薬、ヒアルロン酸の関節内注射などの薬物療法、医療用サポーターを使用する装具療法、痛みを緩和させる物理療法、ひざ関節周辺の筋力を鍛える運動療法などを行います。痛みが改善しない場合には人工関節置換術などの手術が必要となることもあります。
ひざの痛みの原因は、この変形性ひざ関節症だけなく、関節リウマチ、偽痛風、特発性骨壊死症など、いろいろな病気がありますので、早めに診察を受けてください。
痛みがあれば何か原因があります。ひざの痛みが強くなったり、続いたり、繰り返したりするようであれば、早めに整形外科を受診し、自分のひざの状態について相談してください。
一般社団法人右京医師会 長岡 孝則
5月号 「結膜炎って、よく聞くけれど?」
「結膜炎ですねぇ」
「え?アレルギーやないんですか?」
診察中、このような会話になることがしばしばあります。
結膜炎というのは、白目の表面からまぶたの裏側を覆っている「結膜」というところの炎症すべてをいいます。原因によってアレルギー性、細菌性、ウィルス性などと言うこともありますし、原因を確定し難い場合には起こり方などから急性、慢性と言うことも多いです。
症状は充血、目やに、腫れ、痒み、異物感、乾燥感などですが、原因や病期、強さによって様々です。痒みと涙が多いからアレルギーだと思っていたら実は「はやり目」で、勘違いしていた間に家族にも感染してしまった、ということもあります。
ところで、「はやり目」ってどういう病気かご存知でしょうか。アデノウィルスが原因で時に角膜(黒目)にも小さなにごり等を起こす重症の結膜炎です。非常に感染力が強いためこのように呼ばれます。正式には「流行性角結膜炎」といい、同様に感染力が強い「急性出血性結膜炎(エンテロウィルス、コクサッキ―ウィルスが原因。比較的少なく経過は短い)」とともに法定感染症に指定されています。感染すると、学校保健安全法により、医師の許可が出るまで登校(園)停止となります。結膜炎だけで学校に行けないなんて、と驚かれることも多いです。
保育園や幼稚園では園児どうしや先生との接触が多く、感染しやすいため、非常に注意を払われています。目が充血している園児がいると、眼科受診を促され、時に園児を預かってもらえないことがあるようです。そのため、園児を連れて受診された保護者は「はやり目ですか?違う結膜炎ですか?」と尋ねて来られます。しかし正直申しますと、初診でその判断をするのは非常に難しいのです。多くはその症状の出かたや粘膜・目やに等の状態によって診断し、典型的なものはほぼ間違いないのですが、なかには判断をつけ難い症例があります。アデノウィルスの診断キットは検出率が70%程度なので、陰性だったとしても「はやり目」ではないとは断言できません。結局2,3日は登園せず点眼治療しながら様子を見て判断、ということになります。感染を拡げないために少し我慢をして頂くことが必要です。
「はやり目」の場合は治療に抵抗し1週間程症状が強まります。治癒までは、軽症例で大体1~2週間程度、重症例ですと1カ月以上かかることもあります。潜伏期は数日から2週間程度ですので、いつの間にか感染している可能性があります。かからないためには、手洗いを十分に行う(水道の流水で石鹸を用いて15~30秒以上)、タオルは個々のものを使用する、必要以上に目を触らないなど、普段から意識していることが大切かもしれません。
一般社団法人右京医師会 西田 惠理
4月号 「~冬の乾燥から「かくれ脱水」を予防しょう~」
冬でもしらずしらずに脱水が起こっているのです。脱水はいろいろな病気の発症につながり重症化しやすいと言われています。
冬の脱水の原因は「からだ」の周囲の環境の変化がもっとも大きく、湿度が下がると部屋が乾燥し知らない間に水分が失われ脱水を起こしてしまいます。それは不感蒸泄(皮膚、粘膜、呼気などから意識しないうちに失っている水分)が増えるからです。不感蒸泄で失われる水分は体から出て行く水分の80%と言われています。屋外よりも室内の方が湿度は下がりやすく、十分な注意が必要です。湿度が下がると「からだ」から水分が失われます。快適な湿度は50%~60%ですが冬場は特に50%以下になることが少なくありません。
乾燥の原因には住環境が大きく関係しています。暖房器具の使用、住宅の気密性の向上、そして畳が減ってフローリングが増えた事など室内が乾燥しやすい要因となっています。そして、乾燥を予防する為には以下の方法が有効です。
1、加湿器を使う
2、換気をする
3、洗濯物を部屋に干す
4、室内で植物を育てる
5、水を張ったバケツにタオルをかける
6、照明をLEDに変える
7、石油ストーブには水を入れたヤカンを乗せる
また、朝・昼・夕の3食以外に意識をして水分摂取を心がけましょう。ミネラルが豊富なり緑黄色野菜や果物を摂取し「かくれ脱水」を予防する事が大切です。
鼻は天然のフィルターで体にとって大切な加湿器です。鼻呼吸やウォームビズ(着るものを調節して暖房を抑える)を心がけて不感蒸泄を抑えることも大切な事です。訪問看護ステーション右京医師会 木村 春香
3月号 「集団保育児の中耳炎について」
4月からお子さんの集団保育をはじめようとお考えのお父さん、お母さん方に知っておいていただきたいことがあります。特に6ヶ月から2歳までのお子さんをお預けになる場合、中耳炎に対して注意が必要です。6ヶ月頃まではお母さんから受け継いだ免疫力があり、2歳頃からはお子さん自身の免疫力が備わってきますが、その間は免疫力の谷間の時期にあたり、いろんな感染症を起こしやすく、また重症化しやすくなります。この時期の急性中耳炎も治りにくく、繰り返しやすく、重症化しやすいのです。急性中耳炎はきたない鼻水を出している時に、鼻から耳管という鼻と耳をつなぐ管を通って耳にも細菌感染を生じ、耳の痛み、発熱、不機嫌、耳だれ等の症状を呈します。原因となる細菌は肺炎球菌とインフルエンザ菌が多く、いずれもワクチン接種が行われるようになっていますので、ワクチン接種が国内に導入される前のように入院が必要となるような重症例は少なくなってきていますが、きたない鼻水を出している時に、発熱、不機嫌、耳だれ、耳を気にする等の症状があれば要注意です。お近くの耳鼻咽喉科医か、耳もしっかり診てもらえる小児科医にご相談下さい。
一般社団法人右京医師会 鈴木 敏弘
2月号 「こどもの便秘」
お正月が明けてから、「なんかお腹が痛い、しんどい・・・」という子の受診が相次ぎました。
やはりお正月の間にたくさん食べたり飲んだりした分がたまっているようです。
よく問診で、「便はでていますか?」と聞くと、お母さま方は「はい出ています。2日おきに」 「どんなうんちですか?」 「えーと、ころころした小さいうんちが何個か。でも、出ているから便秘ではないですよね?」
こんなやりとりがよくあります。
この場合、腹部エコーで確認すると、腸の中は便だらけ、ということになっていることが多いです。お腹は触ると固く、食欲もあまりありません。
このような子の便秘が改善すると、お腹はとても柔らかくなり、とても元気になります。
改善した後にお母さま方に聞くと、「うんちが毎日出ていると、機嫌もいいし、お腹がすごく柔らかいんです。こんなに違うんですね。」とおっしゃいます。
便が出ていないと、こどもはすぐにいらいらしたり、落ち着きなくなったりするのです。
冬は水分をとる量も減り、外での運動量も減るので、便秘がちになりやすいのですね。
こどもの場合、気が付かないうちにすこしずつ便がたまっていってそのうち激痛となったりするので、普段からお腹をさわってあげて、気をつけたいものです。
もちろん、食生活への留意も必要です。
お菓子の食べ過ぎ、パンの食べ過ぎ、野菜嫌いなどは、便秘の原因となります。
『好きなものをおかわりする前には、お皿に残ったお野菜を食べようね。』と声掛けしてみてもよいですね。
野菜をおいしく調理する工夫をたくさんしていきましょう。
一般社団法人右京医師会 紀 優子
1月号 「高齢者の帯状疱疹は予防可能か?」」
帯状疱疹は80歳までに3人に1人はかかる病気です。激しい痛みを伴った小さな水ぶくれが体の片側に帯状に出現します。この原因は水ぼうそうを起こすのと同じウィルスでおこります。多くの人は小児期に水ぼうそうになりますが、水ぼうそうが治っても、体内のウィルスが完全に排除されずに一部のウィルスが神経節という部分にずっと潜んでいます。そして、ストレス、高齢(特に50歳以降)、病気などによる免疫力低下などがきっかけとなってウィルスが再び活性化すると帯状疱疹をおこします。
帯状疱疹が一番おこりやすいのは、助骨に沿った部分や腰の片側ですが、顔にできると失明したり、難聴や顔面神経麻痺になったりすることもあります。また、帯状疱疹が治まった後も、10~15%の人には焼けるような痛みや、しびれが残る帯状疱疹後神経痛という状態になることがあり、これも高齢であるほどに確率が高くなるとされています。
アメリカではこの帯状疱疹、50歳以上の人を対象にワクチンの接種が推奨されるようになりました。このワクチンは水ぼうそうワクチンと比べると、14倍というかなり高濃度のワクチンウィルス株が用いられています。
ワクチン接種の効果は、帯状疱疹にかかるリスクを半減させ、また帯状疱疹後神経痛のリスクを6割以上減らしたとされています。5年に1回の追加接種が推奨されています。
残念ながら日本では帯状疱疹ワクチンは有りません。やむを得ず、水ぼうそうワクチンが帯状疱疹の予防に使われています。ただ、濃度が低いため、十分な予防効果があるのか十分なデータがありません。
しかし、予防できる唯一の手段ですので、50歳以上で糖尿病など基礎疾患のある方は特に接種することをお勧めします。
一般社団法人右京医師会 泉谷 信