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6月号 「大人になってから、発達障害に気がつくのはなぜ?」

 


発達障害は、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動症)、LD(学習障害)など、生まれつきみられる脳の発達の違い・アンバランスによるものです。本人のやる気や努力不足、保護者の育て方などによって起こるものではありません。小児期の一時的なものではなく一生を通じて存在しうるものです。
「大人になってから、突然、発達障害になる」というわけではありません。
多くの場合、発達障害の特性は子供の頃から現れますが、子供の頃は単なる個性の一つとして捉えられたり、周囲から手厚くフォローされたりするため、本人も周囲の人も発達障害の特性であるとは気づかずに大人になることがよくあります。
しかし、進学や就職で社会に出ると、人間関係は複雑になり、様々な相手と曖昧さを含んだコミュニケーションをとることや、相手の表情からすべきことを察したり周囲に合わせて行動するといった「空気を読める」ことが要求されるようになります。
また、社会的制約や責任が増えて、遅刻やうっかりミスが許されにくくなります。こういった中で、潜在的に持っていた発達障害の特性が浮かび上がってきて人間関係や仕事でつまずいてしまい、その時に初めて発達障害の可能性に気付くことになります。
発達障害の特性から生活や仕事の中でつまずいたり、困難が続いて生きづらさを感じたりしてストレス状態が続くと、「うつ」になったり、不安が大きくなりすぎたり、時には「ひきこもり」となってしまうこともあります。
発達障害の特性は欠点になるとばかり考えられがちですが、環境や場面によっては長所にもなり得ます。自分の特性に気付いて少し工夫したり、その特性を周囲に伝えて支援を受けたりすることで、気持ちが楽になったり、自分らしくスムーズに社会生活を送れる可能性があります。苦手なことを工夫することによって生きやすくなることや、得意なことで大きな力を発揮できるようになる人も少なくありません。
「もしかしたら自分は発達障害なのかもしれない」と思ったときは、専門の相談窓口・心療内科・精神科へ相談しましょう。相談をすることで、専門家によるサポートや行政による就労支援を受けることができるかもしれません。

 


一般社団法人右京医師会 杉山 タカネ

5月号 「甲状腺と昆布」


「昆布は身体に良いと思って、昆布でご飯を炊いたり、出汁を取り終わった昆布を細かく刻んで食べていました。」「昆布だしを毎日飲んでいます。」
以前、勤めていた病院で、このような話を患者さんから伺うことがありました。確かに昆布は低カロリーでミネラルや食物繊維も豊富で身体に良いと言われていますが、「ヨウ素(=ヨード)」もたくさん含むことが知られています。(※葉酸とは全く別ものです)ヨウ素を過剰に摂取した場合、甲状腺機能低下症になる可能性があり、その場合、ヨウ素摂取を減らすことで甲状腺機能が改善することが多いです。(ただし他に原因があって甲状腺機能が低下している場合はヨウ素制限のみで改善しない場合もあります。)
厚生労働省の食事摂取基準 (2020年版)によると成人のヨウ素摂取の耐容上限量 (健康障害が起こらない上限量)は1日あたり3mgとされています。昆布には特に大量のヨウ素が含まれており昆布100gあたりヨウ素は約200mg、昆布だし100gあたりヨウ素は約5mg含まれています。このように、昆布を常食している場合には、ご自身が思っている以上に摂取過多になっている場合があるので注意が必要です。昆布以外の海藻類にはそこまで多くヨウ素は含まれていませんので、普通に摂取するのは問題ありません。食品ごとのヨウ素含有量が心配な方は文部科学省の食品成分データベースを参照頂けたらと思います。(表示成分選択で「ヨウ素」を選択してください)(https://fooddb.mext.go.jp/index.pl
一方、ヨウ素は海藻類や魚介類に十分量含まれており、極端な食事制限をしていない限り日本人がヨウ素不足になることは稀です。

 


一般社団法人右京医師会 中泉 伸彦

 

4月号 「4月病」


4月に起こりやすい病気をGoogleで検索すると“4月病”が上位表示されてきます。これは俗称となりますが、これをテーマに執筆させていただきます。 昨今様々な疾病が存在する中、その根幹となる“からだ”の状態そのものが、この時期は特に崩れやすくなるといった概念です。
この要因としてはまずは寒暖差による気圧の変動が大きいこと。また、新しい職場や仲間、引っ越し等周辺環境が変わることで心の疲労をともなうこと。その双方で自律神経が乱れやすくなります。(実際には交感神経優位になりやすいといった報告があります。)
それではこの時期をどう乗り切るのが望ましいでしょうか?答えはやはり交感神経に対峙するには副交感神経を優位にする行動が望ましいでしょう。具体的には睡眠の確保と朝昼晩の食事を行うことです。睡眠は決まった時間に寝て、決まった時間に起きること、食事はなるべく同じ時間に行うことが重要です。これらが体内時計が整い、自律神経のコントロールがしやすくなります。
また、交感神経の賦活化の主因となるストレスを意識することも大切なことと考えます。ストレスが溜まりやすい時期ですので、気づかないうちに膨大化してしまいます。その原因を冷静に判断することで対応の仕方も変わってきてうまく往なすこともできます。 この時期にしっかり対応し、後の“5月病”に陥らないように心がけましょう。

 


一般社団法人右京医師会 清水 導臣

 

3月号 「ドライアイは煩わしい」

 


空気が乾燥していると、眼の表面から涙液が蒸発しやすくなります。そのため、湿度が低下する秋~冬の時期は、ドライアイの症状が現れやすくなります。また、冷暖房の効いた部屋も湿度が低下するため、注意が必要です。
人は無意識下でも、3秒に1回の頻度でまばたきをします。しかし、目の前の作業に集中していると、まばたきの回数は減少します。その結果、涙液の蒸発が進行するうえに、分泌量も低下します。近年では、パソコンやスマートフォンなどの普及によって、VDT症候群(デジタル機器の操作によって、疲れ目やドライアイを引き起こす症候群)になっている人が増加傾向にあります。 また、まばたきをした瞬間、まぶたをきちんと閉じることができていない人もいます。
まばたきをきちんと行わないと、眼球表面の下の方が乾きやすくなります。この場合は、睡眠時に薄目を聞くクセがある人や、コンタクトレンズを普段装着している人に多いと考えられています。
残念ながら、ドライアイは治療を続ける必要がなくなる「完治」が得られる病気ではありません。 点眼などの治療を続けることで、生活の質を落とさないようにすることが治療の目的です。 ドライアイ治療は「悪化要因の除去」と「点眼薬による水分の補充」が重要です。
日ごろから「まばたき」を心がけて、不足している涙液の成分を補うための目薬などをさし続けた場合にのみ、症状をおさえることができるやっかいな病気です。

 


一般社団法人右京医師会 富井 聡

 

2月号 「スギ花粉症をなおす方法があります ~舌下免疫療法について~」

 


今や国民病といわれる春の花粉症の季節が近づいてきました。新型コロナもまだ根強くありますが、野外でのマスク着用は基本的には不要と考えてよいと思います。…が、花粉症の方にはむしろマスクが手放せない時期となっています。花粉症対策にはまずマスクなどで暴露を少なくし、次に薬ですが、今回ご紹介するのは舌下免疫療法といい、アレルギーの体質を改善する治療です。アレルギーの原因物質のエキスの薬を下の裏側に1分置くのを毎日、長期間続けることでアレルギーを軽減することができます。現在スギとダニのアレルギーに対して治療薬があります。治療期間が3年から5年と長いのが欠点ですが、多くの方は1年ごとに効果を実感されており、花粉症の時期でも薬なしで大丈夫だった!という方も多いです。治療開始時期は花粉の飛散時期を避けて、飛散の落ち着いた6月から、まだ花粉の飛んでこない12月くらいまでに始めるのが一般的です。今シーズンは薬で乗り切り、来シーズン以降に向けて舌下免疫療法を検討するのがおすすめです。
ただ実は、非常に残念なことに、治療薬の需要が増えたため昨年からスギ舌下免疫の開始時の治療薬の生産がほぼストップしており、薬局に入ってこない状態がつづいています。私としても患者さんに勧めているのですが薬がないので始められない、という歯がゆい状態です。いずれ薬の流通は回復するはずですので、今回は舌下免疫という治療方法があることを知っていただければと思います。

 


一般社団法人右京医師会 神谷 透

1月号 「結核は昔の病気?」

 


正岡子規、石川啄木、樋口一葉、中原中也・・・
美しい句、詩、文学作品を残しながらも、若くして亡くなった方々です。その命を奪ったのは、結核です。結核は1950年代半ばまで、死因の上位を占め「亡国病」と恐れられる病気でした。
その後は、医療の進歩や栄養状態、生活水準、公衆衛生の向上によって着実に減少し、今では日本も西欧諸国と同じように「低まん延国(結核が少ない国)」と言われるようになりました。しかし、今でも日本国内で1日に28人の新しい結核患者が発生しています。その約4割は80歳以上の高齢者です。結核菌に感染しても、8割以上の人はいったん自分の免疫力で菌を抑え込みますが、加齢や病気で免疫力が落ちると、結核菌が活動を始め症状が現れます。(これを発病と言います。)今、結核を発病する高齢の方の多くは、結核が大流行していた1930年~1940年ごろに感染されたと推測されます。
結核に多い症状は、咳・痰・微熱・身体のだるさなど、かぜに似ています。しかし、かぜならだいたい1週間以内でおさまるのに比べ、結核はそれらの症状が長く続きます。症状が2週間以上続く場合は、受診するようにしましょう。
なお、高齢の方は咳などの症状が出にくいこともあるので、微熱が続く、食欲・活気がないといった場合は、受診するようにしましょう。
また、症状がなくても健診で結核が見つかることもあります。特に65歳以上の方は年1回定期的な胸部レントゲン検査をおすすめします。
結核は「昔の病気」ではありません。早く気付いて受診し、治療を確実に行うことが大切です。

 


一般社団法人右京医師会 有本 晃子