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3月号 「ドライアイは煩わしい」

 


空気が乾燥していると、眼の表面から涙液が蒸発しやすくなります。そのため、湿度が低下する秋~冬の時期は、ドライアイの症状が現れやすくなります。また、冷暖房の効いた部屋も湿度が低下するため、注意が必要です。
人は無意識下でも、3秒に1回の頻度でまばたきをします。しかし、目の前の作業に集中していると、まばたきの回数は減少します。その結果、涙液の蒸発が進行するうえに、分泌量も低下します。近年では、パソコンやスマートフォンなどの普及によって、VDT症候群(デジタル機器の操作によって、疲れ目やドライアイを引き起こす症候群)になっている人が増加傾向にあります。 また、まばたきをした瞬間、まぶたをきちんと閉じることができていない人もいます。
まばたきをきちんと行わないと、眼球表面の下の方が乾きやすくなります。この場合は、睡眠時に薄目を聞くクセがある人や、コンタクトレンズを普段装着している人に多いと考えられています。
残念ながら、ドライアイは治療を続ける必要がなくなる「完治」が得られる病気ではありません。 点眼などの治療を続けることで、生活の質を落とさないようにすることが治療の目的です。 ドライアイ治療は「悪化要因の除去」と「点眼薬による水分の補充」が重要です。
日ごろから「まばたき」を心がけて、不足している涙液の成分を補うための目薬などをさし続けた場合にのみ、症状をおさえることができるやっかいな病気です。

 


一般社団法人右京医師会 富井 聡

 

2月号 「スギ花粉症をなおす方法があります ~舌下免疫療法について~」

 


今や国民病といわれる春の花粉症の季節が近づいてきました。新型コロナもまだ根強くありますが、野外でのマスク着用は基本的には不要と考えてよいと思います。…が、花粉症の方にはむしろマスクが手放せない時期となっています。花粉症対策にはまずマスクなどで暴露を少なくし、次に薬ですが、今回ご紹介するのは舌下免疫療法といい、アレルギーの体質を改善する治療です。アレルギーの原因物質のエキスの薬を下の裏側に1分置くのを毎日、長期間続けることでアレルギーを軽減することができます。現在スギとダニのアレルギーに対して治療薬があります。治療期間が3年から5年と長いのが欠点ですが、多くの方は1年ごとに効果を実感されており、花粉症の時期でも薬なしで大丈夫だった!という方も多いです。治療開始時期は花粉の飛散時期を避けて、飛散の落ち着いた6月から、まだ花粉の飛んでこない12月くらいまでに始めるのが一般的です。今シーズンは薬で乗り切り、来シーズン以降に向けて舌下免疫療法を検討するのがおすすめです。
ただ実は、非常に残念なことに、治療薬の需要が増えたため昨年からスギ舌下免疫の開始時の治療薬の生産がほぼストップしており、薬局に入ってこない状態がつづいています。私としても患者さんに勧めているのですが薬がないので始められない、という歯がゆい状態です。いずれ薬の流通は回復するはずですので、今回は舌下免疫という治療方法があることを知っていただければと思います。

 


一般社団法人右京医師会 神谷 透

1月号 「結核は昔の病気?」

 


正岡子規、石川啄木、樋口一葉、中原中也・・・
美しい句、詩、文学作品を残しながらも、若くして亡くなった方々です。その命を奪ったのは、結核です。結核は1950年代半ばまで、死因の上位を占め「亡国病」と恐れられる病気でした。
その後は、医療の進歩や栄養状態、生活水準、公衆衛生の向上によって着実に減少し、今では日本も西欧諸国と同じように「低まん延国(結核が少ない国)」と言われるようになりました。しかし、今でも日本国内で1日に28人の新しい結核患者が発生しています。その約4割は80歳以上の高齢者です。結核菌に感染しても、8割以上の人はいったん自分の免疫力で菌を抑え込みますが、加齢や病気で免疫力が落ちると、結核菌が活動を始め症状が現れます。(これを発病と言います。)今、結核を発病する高齢の方の多くは、結核が大流行していた1930年~1940年ごろに感染されたと推測されます。
結核に多い症状は、咳・痰・微熱・身体のだるさなど、かぜに似ています。しかし、かぜならだいたい1週間以内でおさまるのに比べ、結核はそれらの症状が長く続きます。症状が2週間以上続く場合は、受診するようにしましょう。
なお、高齢の方は咳などの症状が出にくいこともあるので、微熱が続く、食欲・活気がないといった場合は、受診するようにしましょう。
また、症状がなくても健診で結核が見つかることもあります。特に65歳以上の方は年1回定期的な胸部レントゲン検査をおすすめします。
結核は「昔の病気」ではありません。早く気付いて受診し、治療を確実に行うことが大切です。

 


一般社団法人右京医師会 有本 晃子